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日本の鉄道の歴史は、そのまま勾配との闘いの歴史であったといっても過言ではない。 今でこそ車両性能が向上して、新幹線車輌ですら30‰を越える急勾配を走っているのだが、昔の蒸気機関車は15‰程度の勾配でも苦労していたもので、ループ線やスイッチバックなどといった配線の工夫も見られた。 なかでもスイッチバックは、勾配区間の途中に駅(及び信号場)を設置する場合に有効で、全国各地に設置されていたのだが、今では9駅を残すのみで、レールファンの興味を集めている。 そんなスイッチバック駅で近畿地方に現存するのは唯一箇所、JR和歌山線の北宇智駅のみである。 TTTでは、2000年5月に敢行した「大阪近郊区間大回りの旅」の道中で北宇智駅を通っているのだが、停車時間が短かったために殆ど観察も出来ずに終わっている。 という訳で今般、TTTでは北宇智駅の詳細見聞を企画した。 2000年11月25日(土) この日、和歌山線橋本駅では和歌山線開業100周年の記念イベントが行われた。その模様を見学した帰り、橋本駅発13時01分の奈良行き普通電車(105系2連)に乗車する。橋本〜高田には、デイタイム1本/hというローカルダイヤが組まれているので、立ち客も居るほどの盛況。ま、今日は橋本のイベントを見学しての帰りという私のような者も多いのではあるが・・・。 五条で9分停車という小休止を行い、いよいよ勾配区間に入る。とはいえ最急勾配はたかだか20‰なので、電車にとっては楽な感じで駆け上がる。やがて、左車窓に北宇智駅のホームが見えるが、列車はそのまま進んで引込み線に入って停車。ものの20秒ほどでポイントが切り換わって場内信号に注意が現示されると、105系電車は警笛を短鳴してバックを始める。因みに、運転士は側窓から顔を出して後方確認している。左側通行の形で駅へ進入し、定刻の13時36分に停車した。 ホームに降り立つと、列車はすぐに発車。ポイントを渡って、高田方面への上り勾配を力強く駆け上がって行った。北宇智駅で降りた乗客は、私の他に5名いたのだが、駅前から徒歩やバイクで離れてしまうと、北宇智駅ホームには静寂が訪れる。次の下りは13時54分発で、上りは14時36分発までない。駅周辺には民家が見えるものの人影もなく、静か過ぎて気持ち悪いぐらい。 跨線橋の上から五条方面を眺めてみると、別の鉄道路線が並行しているように見える。さて、北宇智駅は無人駅なので、思う存分見て周ろう。まず改札口跡には、ホーロー製の金剛山登山口の案内板が掲げられており、関西でただひとつのスイッチバック駅である旨が表記されている。駅舎は山小屋風の可愛らしいもので、なかなか良い雰囲気を醸し出している。無人駅ながらも、駅舎内には自動券売機が設置されていたので、ここから先の乗車券を買い求めておく。記念用に入場券でもあったら買ったのだが、残念ながら乗車券のみの発売。 駅前には金剛山までの案内地図が掲げられていたが、ここにもスイッチバック 近畿で一ヶ所ここだけという表記があった。駅から高田方面に少し歩くと、小さな踏切がある。この踏切は、駅と引込み線の間にあるので、北宇智を発車した下り列車と、北宇智に到着する上り列車が通る時は、引込み線でスイッチバックする間ずっと閉まりっぱなしとなる。見切り発車をしないよう注意を促す標識が設置されていた。 踏切から高田方面を見てみると、本線の勾配がよく解るのだが、電車ならば駅が作れない勾配ではない。駅の方を見てみるとクロッシングポイントがあり、五条へ向かう本線が薮の向こうへ消え落ちている。 そうこうしているうちに、下り列車の発車時刻が近付いた。駅へ戻ってみると、和歌山行きを待つ乗客は1名のみ。ホームの端に立ってホームを一望してみると、行き止まりの終着駅のような感じがする。 待つことしばし、踏切の警報機が聞こえてきて、和歌山行きの普通列車が進入してきた。下車する乗客はなく、待っていた1名の乗客を乗せると既にポイントが切り換わっており、スイッチバックして発車し、引込み線へのポイントを渡って行く。そして、またポイントが切り換わるのを待って、五条へ向けての勾配を駆け下りて行く。 再び静寂が訪れた北宇智駅。今度はホーム反対側の行き止まりになっている部分へ行ってみる。ほとんど保線もされていないようなレールの先には、車止めが見え、その先は薮の中。ホーム有効長は6両で、長くても4両編成までしか入ってこないので、よほどの事がない限りはホームを通過しちゃうような事はないだろう。運転間隔が思い切り開いていて、暫く列車が来ない事は解っているので、ルール違反とはなるがホームから軌道上(といっても、通常では列車が来ない部分)に降りてみた。2本の線路の間に立って高田方面を見てみると、2つの出発信号機が仲良く並んで停止を現示しているのが遠くに見える。 再び駅前へ出、近くの自販機でジュースを買ってきて、喉を潤しつつ一服つけていると、金剛山登山の帰りらしい人が7〜8名やってきた。わいわいと話しながら乗車券を購入しているのを遠巻きに眺めつつ、次の上り電車で帰途につこうと決める。 ホームで待っていると、踏切の警報機が鳴り出すのが聞こえてきた。ホームの裏手を注視していると、桜井線経由の奈良行き電車が勢いよく勾配を駆け上ってきて通過して行く。慣れないと、ちょっと奇妙な感覚に陥るのかな?と思いつつ、引込み線でスイッチバックして入線してきた列車に乗り込み、帰途についた。 という訳で、正味1時間を北宇智駅で過ごしたのであるが、列車が発着する僅かな時間を除いては、非常に静かな居心地の良い駅だった。最急勾配20‰では、今の電車ばかりが走る状況ではスイッチバックの必要はないのだが、ホームの移設や配線の変更などといった大掛かりな工事をする必要性も見出せない。棒線の停留場にするのなら、それほど大掛かりな工事の必要もないのだが、ここで交換するダイヤも組まれているので、それも良くないだろう。という訳で、和歌山線が複線化でもされない限りは、北宇智駅のスイッチバックは残るものと考えられる。 帰りの列車の中で、またいつか何かのついでにでも北宇智駅を訪れてみたいと思った。 |